苗・株の選び方
苗木は幹がまっすぐで根元がぐらつかず、葉色の濃いものを。花付きを早く楽しみたいなら、樹高1m以上の花芽付き株を秋に選ぶと翌年から香りが期待できます。斑入り品種や四季咲き性のウスギモクセイなど変わり種もあります。
Hapot編集部より
キンモクセイ(金木犀)は、秋の訪れをどの植物より先に「香り」で知らせてくれる庭木の名花です。9月下旬〜10月、オレンジ色の小花が一斉に開くと、庭どころか街全体が甘い香りに包まれます。三大香木(キンモクセイ・ジンチョウゲ・クチナシ)の筆頭格で、この香りのために植える人が後を絶ちません。性質は丈夫で刈り込みに強く、生け垣・目隠し・シンボルツリーと用途も広い実力派。日本で流通する株はほぼすべて雄株のため実はなりませんが、その分、花と香りに全力投球してくれます。手入れの核心はただひとつ「剪定の時期」:花芽ができた後に刈ると秋の香りが消えるため、「花後すぐ〜春」の剪定を守ることが、毎年香る庭への一本道です。
水やり
庭植えは根付けば不要。鉢は表面が乾いたら
日光
直射日光
適温
-5〜35°C(関東以西で庭植え可)
湿度
40-60%
土
水はけの良い肥沃な土
肥料
2月の寒肥+花後のお礼肥
成長速度
中(放任で5m超、刈り込みで維持)
毒性
無毒。花は桂花茶・桂花陳酒など食用にも使われる
苗木は幹がまっすぐで根元がぐらつかず、葉色の濃いものを。花付きを早く楽しみたいなら、樹高1m以上の花芽付き株を秋に選ぶと翌年から香りが期待できます。斑入り品種や四季咲き性のウスギモクセイなど変わり種もあります。
日当たりの良い場所に植えるほど花付きと香りが充実します。半日陰でも育ちますが花数は減少。関東以西の平野部なら庭植えで問題なく越冬します(耐寒目安-5°C程度。寒冷地では鉢植えにして冬は軒下へ)。排気ガスなど大気汚染にやや敏感で、幹線道路沿いでは花付きが落ちることも。成木は横にも張るため、隣家との境界からは1.5m以上離して植えると後々の管理が楽です。鉢植えなら5年目以降も大きさを制御できます。
庭植えは根付いた後の水やりは基本不要で、真夏に日照りが続くときだけたっぷり与えます。植え付け後1年間は根が浅いため、土の表面が乾いたら水やりを。鉢植えは通年「表面が乾いたらたっぷり」で、特に開花前の9月に水を切らすと花芽が傷み、香りの秋が台無しになるため、残暑の水切れにだけは注意してください。
水はけの良い肥沃な土を好みます。植え付けは3〜4月か9月(開花前後を避ける)。植え穴に腐葉土と堆肥をたっぷり混ぜ込み、深植えにならないよう接ぎ口を出して植えます。鉢植えは市販の花木用培養土でOK。酸性土壌に傾きすぎると生育が鈍るため、庭植えは数年に一度、苦土石灰を軽く施すと安定します。
キンモクセイ管理の核心です。適期は「花後すぐ(11月)〜3月」:翌年の花芽は春に伸びた新しい枝に夏頃つくられるため、夏以降の剪定は花芽ごと切り落とすことになります。「秋に咲かなかった」の原因の大半がこの夏剪定です。基本は刈り込みバサミで表面を整える軽い剪定+混み合った内部の枝抜き。大きさを詰めたい年は2〜3月に強めに切り、その年の花はやや我慢する、と計画的に。生け垣は年1回、花後の刈り込みで十分整います。
鉢植えは2〜3年に1回、3〜4月に一回り大きな鉢へ。根詰まりすると花付きが目に見えて落ちます。庭植えの移植は嫌うため、場所は最初に慎重に決めること(成木の移植は根回しが必要な大仕事になります)。
挿し木で増やせます。適期は6〜7月:今年伸びて少し硬くなった枝を10〜15cmに切り、下葉を取って発根促進剤を付け、赤玉土に挿して乾かさないよう半日陰で管理します。発根まで2〜3か月とゆっくりで、成功率も中程度なので数多く挿すのがコツ。日本のキンモクセイは雄株のみで種はできないため、増やす手段は挿し木一択です。
丈夫で病害虫は少なめですが、ハダニ(乾燥期に葉がかすれる)とカイガラムシ(枝に付着しすす病を招く)に注意します。どちらも見つけ次第の除去と、混み枝を抜く剪定での風通し確保が予防に。イラガの幼虫(触ると激痛)が夏に葉裏に付くことがあるため、夏の手入れは葉裏を確認しながら。葉が黒く汚れるすす病はカイガラムシ退治とセットで解消します。
3〜4月が植え付け・植え替え適期。強剪定もこの時期までに。
剪定禁止期間(花芽形成中)。イラガと水切れに注意。
9月下旬〜10月に開花。香りを満喫。花後に軽い剪定OK。
2月に寒肥(油かす+堆肥)。休眠期の枝抜き剪定も可。
原因
夏以降の剪定で花芽ごと切った(最多)、若木、日照不足のいずれか。
対策
剪定を「花後〜3月まで」に変更すれば翌年から咲きます。植えて数年の若木は開花までの助走期間なので、日当たり確保と2月の寒肥で株を充実させて待ちましょう。
原因
すす病。カイガラムシの排泄物に黒カビが生えた状態。
対策
元凶のカイガラムシを枝ごとチェックしてこすり落とし、混み枝を剪定して風を通します。冬のマシン油乳剤散布が翌年の予防に効果的です。
キンモクセイの花言葉は「謙虚」「気高い人」。強い香りに反して小さく控えめな花を咲かせる姿に由来します。「初恋」の意味も、香りの記憶の甘酸っぱさそのものです。
強い芳香は「良い気を呼び、邪気を払う」とされ、玄関近くや門まわりに植える縁起木の定番。金運の「金」の字を持つことから西の方角との相性も良いといわれます。
最大の容疑者は「夏以降の剪定」です。花芽は夏に作られるため、7月以降に刈り込むと花芽ごと失われます。剪定は花後〜3月までに済ませてください。他の要因は①若木(開花まで植え付けから数年かかる)、②日照不足、③夏〜初秋の極端な水切れや猛暑(花芽が傷む)、④肥料切れ。なお開花は気温に敏感で、残暑が長い年は開花が10月後半にずれたり、二度咲きになったりします。1〜2週間遅れは異常ではありません。
満開の香りのピークは1週間前後、開花全体でも10日〜2週間ほどの短い盛りです。雨に当たると花が散りやすく、ピーク中の長雨で一気に終わることも。この儚さも魅力のうちですが、長く楽しみたいなら①咲き始めに枝を切って室内に飾る、②花を集めて桂花茶やシロップにする、③二度咲きしやすい品種・ウスギモクセイを併せて植える、という手があります。
咲きます。ベランダでも十分香りを楽しめ、大きさを制御できる利点もあります。コツは①日当たりの確保(花付きに直結)、②2〜3年ごとの植え替えで根詰まり回避、③9月の水切れ防止、④剪定ルール(花後〜3月)は庭植えと同じ、の4点。鉢は最終的に8〜10号サイズまで育てると、株が充実して毎年安定して咲くようになります。